ヴァイオリン工房は不思議の部屋 ★camera delle meraviglie★

shinop.exblog.jp ブログトップ

<   2013年 01月 ( 5 )   > この月の画像一覧

最近の仕事より

先週割れの修理を施した楽器の表板を戻しました。この楽器についてはネックの差し込み方に問題があってちょっと音のバランスが良くないようでした。

d0079867_23125253.jpgネックの差し込み角度(ネック・プロジェクションといったりします)は楽器に適切な駒と駒に掛かる弦の力を設計するのに重要な要素ですがしばしば修正が必要な時があります。この楽器は以前にもネックの角度を修正した跡があったのですが修理前はその為にネックが2mm程長くなっていました。ネックの長さは130mmが標準なのですが、±2.5mmかわると標準寸法の楽器に比べてポジションの取り方に差を感じたり、1-4弦の張力バランスが変わってきます。


d0079867_22573137.jpg今回は表板を外したのを機会に、またちょっと細めのネックだったので指板を交換してネックと指板の間に木を足してネックの角度を替えるのを所有者に提案しました。
指板を剥がして指板面に適度な厚さの板を張り合わせます。渦巻き側を薄く(ほとんど0mm)、本体側を2mmmmくらい残すように削ります。新しい指板を作ったら指板をネックに載せて適切な駒が作れるよう足した木を削ってネック・プロジェクションを調節します。


d0079867_23263474.jpgこんな感じに仕上がりました。カエデ材の杢もそこそこマッチして外観を損ねない仕事ができたと思います。
ネックはプレーヤーの手が当たる所で触って違和感があったり演奏に支障を来すようではダメなので結構正確な作業になります。既にあるものを壊さずに新しいものを付け加えたり調整してゆくのはゼロから楽器製作をするのとは違う感覚を要します。


d0079867_2326772.jpg楽器関係とは別の件でお客さんからちょっと変わった相談を頂きました。仕事で使っている某コンビニのコーヒーポッドの取っ手が壊れてしまった。それで、その修理を相談されたのですが状況をみたらどうも以前に壊れて修理されたようでそれがうまくなかった。使った接着剤がはみ出して可動部が動かず、断面がしっかりくっ付いていなかったので軽い衝撃で剥がれてしまったようです。ダメ元了解の上で修理を試みました。


d0079867_23385281.jpg先ず断面を奇麗に掃除してしっかり合致するようにします。断面にダボを入れて補強できるよう密着させながらピンバイスで孔を開けます。今回はφ3.0mmのカーボンファイバーを使いました(何でこんなモノがあるのかって話はバイオリン屋のひみつ♥)。
接着剤には前回話題にした二液混交のエポキシ樹脂で、断面がうまく合うようにクランプをかませダボ入れて接着します。矢印が今回挿入したダボです。


d0079867_2346745.jpg最後は接着剤がはみ出さないように注意しながら残った破損箇所をエポキシ樹脂で固めます。幸いにもこれでうまく行きました!いままで動かなかった所も動くようになりめでたしめでたし。

同じ断面の接着でもヴァイオリンの表板の方がより正確な作業を要求されるのを実感しました。この手の作業はヴァイオリンを相手に鍛えられたような気がします。
by shinop_milano | 2013-01-29 23:54 | 篠崎バイオリン工房

エポキシ樹脂:問題といくつかの解決策

数年前にミラノの楽器製作学校の修復科で検討していたテーマ、

楽器の修理・修復で使われた化学系接着を剥がすにはどうしたらよいか?

について、エポキシ樹脂の剥離にはどうしたらよいかということを教官たちと実験していました。戦後化学系接着剤の普及に伴って醋酸ビニル系接着剤(いわゆる、木工用ボンド)などをもちいて美術工芸品の修復が行われたがそれらが時間の経過とともに適切な方法で無かったとわかったとき、それをどうリカバーするか、というのが修復業界のテーマになっていました。


d0079867_123068.jpg醋酸ビニル系接着剤やエポキシ樹脂による接着剤は接着面に「厚み」を残してしまい時間が経つと硬化しバイオリンのワレや剥がれの接着に用いた場合、再び開いてしまったり硬くなり過ぎて音響的に悪影響を及ぼしたりします。
なので、バイオリンの製作、修理に使う接着剤としては水に溶解し木にも相性よくしみ込むニカワによる接着が一般的です。
写真のようにヘタな接着の仕方で塊になって残っていると目を覆いたくなります


d0079867_12495915.jpgそのときのエポキシ樹脂について都合の良い剥離剤がないといいうことで修復化学を教えていたクラウディオ・カネヴァーリClaudio Canevariといっしょにエポキシ樹脂の剥がし方を検討していました。クラウディオ・カネヴァーリのレポート(イタリア語)はこちらに紹介します。画像のリンクが切れているのですが、左の写真のように検討していました。そしたら先日、なんとこのときそこそこいい結果の出た薬品が日本で普通に製品として売られているのを見つけました!


d0079867_12434625.jpgこれです。画材メーカーらクラカベ販売されている油彩画用のリムーバー。主成分はN-メチル-2ピロリドン。筆やパレットに固まってしまった油絵具を剥離させるためのものです。この薬品そのままでは液体なのですがカネヴァーリとはこれにゲル化剤を混ぜて局所的に塗布できるようにしていたのですが、このリムーバーは緩いゲル状です。


d0079867_12593827.jpgすぐに買ってみて実験してみました。板の上にエポキシ接着剤を垂らして硬化させたあとにこのリムーバーを垂らして30分程放置してみました。すると爪楊枝をつかって簡単に掻き取れる程に軟化し写真の通りです。


d0079867_1382875.jpgバイオリンの場合はデリケートなニスで塗装してあるので使用には要注意が必要です。また、市販されている画材とはいえ使い方、使う環境にも注意が必要です。ニスを多少なりとも溶かすのでその点を十分心得ておかなくては行けないのですが、ワレの隙間に残った接着剤などはそのままではスクレーパーや針で掻き取れないので有効な手段だと思います。
by shinop_milano | 2013-01-26 13:09 | 篠崎バイオリン工房

最近の仕事より

これまでブログの更新は停滞気味だったので今年の目標として毎週1回仕事の内容を紹介できるよう定期的に更新しようかな、と先週更新してから思いました。
という訳で今年からは毎週火曜日に投稿できるように努めたいと思います!

d0079867_0172550.jpg先週紹介したワレの接着ですがその後別の問題が発覚。ワレの補強パッチを付けるためにその脇にあった長細い「不思議なパッチ」を剥がしてみました。この部分には、いわゆる、ヤニツボという松ヤニの溜まりがあってそれを埋木で塞いであったのですが表板の内側はしっかり木が埋まっておらず、松ヤニとニカワで埋めていて「不思議なパッチ」でフタをしてあったのでした。


d0079867_0261239.jpgこの処方はスマートでないのできちんと埋木をしてあげて対応することにしました。処置後はこんな感じです。


d0079867_0283726.jpg
この場合埋木をクランプするのに表板のアーチが壊れないように表面に密着するカウンターパーツが必要なので固めのシリコンゴムを用いてクランプ当て木(写真右)を作ります。
埋木をした所も含めてカバーできるように補強パッチをつけてこの部分の対応は終了。表板は本体に接着済みです。


d0079867_0293430.jpg製作を開始したチェロの裏板、表板の接ぎを実施しました。僕は様式の配管パイプを利用したクランプを使ってこんな感じに実施しています。このクランプは締めがハンドル式なので力の加減がし易いので気に入っています。

by shinop_milano | 2013-01-22 22:00 | 篠崎バイオリン工房

最近の仕事より

暮れから年明けにかけて修理・修復の仕事を依頼されたので請け負っています。ちょっと珍しい(?)仕事になったので紹介します。

d0079867_021455.jpgまずこちら、1920年代のSUZUKIバイオリン。ず〜と持ち主の倉にしまってあったそうなのだがふたを開けてみたらバスバー以外の全部の接着が剥がれていた!おじいさまの大切な遺品なので元の通り弾けるように戻してほしい、とのことで組み立てを実施しています。

d0079867_07128.jpg裏板にCカーブの横板を接着する所からはじめ、コーナーブロックを作り直して楽器のフレームを再構築します。
最近クレモナの製作家でこれと同じ手順でバイオリンを作る方法を紹介している例を見ましたが、やってみるとこの方法でもいいかもと思う結果でした。

d0079867_0123442.jpg唯一剥がれないで残っていたバスバーはちょっと貧弱、アルカイックな形状だったので剥がし交換です。

d0079867_0152468.jpgブロック、バスバー、ライニング等のインナーパーツはすべて作り替え。このあとは新しいパーツは新しく見えないよう「お化粧」して表板を貼ってボディは出来上がり。これからネック&指板を仕立てます。


d0079867_024751.jpgつづいて、割れてしまった表板。元々亀裂が入っていて応急処置でニカワを「つめて」あったが、ちゃんとくっ付いていなかったので楽器を落とした時にここからf字孔まで割れてしまった。ワレの状況を確認するとたんまりニカワがたまっていた。水でふやかして丁寧に削除できたが、これが樹脂ボンドだったりすると剥がす時にの断面を痛めあとでちゃんと修理してもきちんとくっ付かないのでほっと一息。

d0079867_031174.jpgこのワレの接着には特殊工具を使用。まずワレの線の裏側両脇に1mm程度の感覚が出来るように木片を接着。

d0079867_033890.jpgJ字型のクランプでワレの両脇の木片を挟み接着面を併せます。表がわに段差が出来ないようアーチが崩れないようクランプに掛かる力を加減して接着。結果、奇麗に接着できてめでたしめでたし。
by shinop_milano | 2013-01-15 00:38 | 篠崎バイオリン工房

明けましておめでとうございます 2013

d0079867_2235376.jpg年も改まりまして、新年あけましておめでとうございます。

昨年末からいろいろ依頼を受けた修理、修復がたまっていてそれらをこなすのにかまけてあまりブログを更新できていませんでした。。。正月休み中は工房に無線LANを導入したり、収納スペースを拡充したりと新しい年に備えて準備を進めていました。

年明け仕事始めの4日からお客様からの依頼などあり順調な滑り出しを予感していたのですが、油断したのか作業注にノミで左手人差し指を切ってしまい昨日からブルーな状態でいます。重傷という訳ではないのですが、業務的には弓の毛替えが数日できないかなぁ、という感じです。毛替えの依頼を検討されていた方はごめんなさいm(_ _)m。

今月で開業2年になりますが、依頼される仕事も多くなってきて仕事の整理が課題になってきました。早速ケガをしてしまったのを戒めに慢心しないよう気を締めて行こうと思います。
今年の前半の目標としましては昨年後半から停滞気味の楽器製作を計画的に進めていこうかと思っています。まずは依頼を受けているバロック・ヴァイオリン、ヴィオラ(大型)、チェロの製作に取りかかります。ヴァイオリンとチェロについては展示会出品のためなんとか4月までに出来ないかなぁと考えています。
どうぞ今年も宜しくお願いします。
by shinop_milano | 2013-01-05 23:06 | 篠崎バイオリン工房

「ミラノ的ヴァイオリン製作の部屋」改め。埼玉に活動の場を移したヴァイオリン屋の徒然日記


by shinop
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31