ヴァイオリン工房は不思議の部屋 ★camera delle meraviglie★

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カテゴリ:楽器製作( 98 )

チェンバロ製作家のAndrea Restelliを訪ねる

先月のこと、友人の出演するコンサートを聞きに行ったところミラノでチェンバロを製作しているアンドレア・レステッリ氏に会った。当日に使った彼女のチェンバロが彼の作で丁度納品から1年くらい経ち音もよくなってきたから、ということで彼を演奏会に呼んでいたのだった。レステッリ氏は実はミラノの弦楽器製作学校の卒業生で今は無い鍵盤楽器製作科の3人いる卒業生のうちの一人で、以前から会って話を聞いてみようかと思っていた人のうちの一人である。なので、面識の無い我々でも共通の友達は数人いるのは以前から知っている。後日アポを取ってということで本日工房を訪ねてみた。
夕方、工房を訪ねてみると彼はフォルテピアノを製作中だった。モデルは?などと聞いてみるとウィーンの1800年代前半フリッツのモデルでピアッティ(シンバル)とタンブーロ(太鼓)つきで・・・、などと話が進みいろいろ説明をしてくれた。一応説明をつけておくとこれは、当時流行った「トルコ風」の曲(トルコ行進曲とか)にチンドン屋よろしく太鼓とシンバルもピアノと一緒にならしてしまうことができる楽器である。その他、製作中のチェンバロや別に完成している楽器などを見せて頂いた。現在バックオーダーがずいぶんあるとのことで向こう数年は仕事に困らないようである。なんせ工房は材木と仕掛かりの楽器のパーツでいっぱいだ。ミラノでも評判はよく、古楽のコンサートでも彼の楽器をよく見かける。
彼の奥さんも実はミラノの弦楽器製作学校の出身であったことがわかり、フィレンツェで美術の勉強もしていた彼女は響板の絵を描いたり、塗装の仕上げなどをしているとのことである。彼女の話を聞いてみたら、僕が学校で習ったパオラの同級生であったことがわかりほかに現在もミラノ周辺で活躍している卒業生の間で誰が一緒に学校にいて・・・などと話してくれた。しかしまぁ、業界というのはどこも世界が狭いものだなぁ、悪いことはできない、と思った次第です。
by shinop_milano | 2009-03-16 22:00 | 楽器製作

新兵器:VERITASのエプロン・プレーン投入!

作業復帰につきカンナがけに金属製の重いブロック鉋(西洋式の金属ボディの鉋)は腕に負担がかかると思いこれを機に新しく小型のブロック鉋を購入してしまいました。カナダのLeeValley社から出ているVERITASブランドのエプロン・プレーン。写真の一番したのです。
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これまで使っていたブロック鉋は荒削り用に一般的なSTANLAYの9"1/2(写真上)、仕上げ削りようにLIE-NIELSENの同じく9"1/2(写真中)。このエプロン・プレーンはこれよりの刃幅も小さく重量もすごく軽い。作業用のエプロンの中に入れて1日中もって歩けるというのが名前の由来とのこと。実際もってみると確かに軽い。マウスの幅は固定だが刃の角度、位置のコントロールはつまみを使って調整できコントロールしやすい。使ってみたところ、重量が無いので慣性力に頼って一気に削るのには向かないが手先で精密にコントロールできると行った感がある。付属の刃もいい感じだ(まだ自分で研いでいないけど)。今回は今まで、姑息な道具、と思い使っていなかった櫛刃の替え刃も買ってしまった。これはカエデなどの杢が強い木の荒削りに便利である(横板の厚み出しには便利なのだ)。これも腕の負担を減らすためということでついでにね。
早速、使い始めに軽い仕事ということでライニング材をを削りだしに小一時間ほど鉋を使い分けてやってみました。いい買い物だったと思っています。
by shinop_milano | 2009-02-18 20:17 | 楽器製作

黄金分割、ブロッコリ・ロマーニとヴァイオリン、またはフィボナッチの悪戯

僕はブロッコリはあまり好きではなかった。しかし、入院中の病院食でブロッコリの付け合わせが何度か出て食べてみるとおいしかった。なるほど、と思い退院後自宅でブロッコリを軽くオリーブオイルで炒め蒸したものを作ったりして食べている。
そんなわけでにわかブロッコリファンになってしまった私が予々興味をもっていたのがブロッコリ・ロマーニ。これだ!
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日本ではお目にかかったことが無いがミラノでは市場でよく売られている。名前は「ローマのブロッコリ」だけどミラノでも売っている。直感して、えっ、これ食べられるの?という様相である。だって、貝殻みたいだし、トゲトゲ、しかも緑色だよ。今までは手にする勇気がなかったがにわかブロッコリファンとしてとうとう勇気を出して市場買ってみた。
で、調理前にじっくり眺めてみて驚いた。こ、こ、こ、これはっ・・・!このブロッコリただ者ではない、なんと渦を巻いている!上から見たさ写真をお見せしよう。
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それぞれの突起の部分が渦巻きを巻いているのである。まるでヴァイオリンの頭と同じだ。ここから数学的に考察してみよう。まずすぐに気づくブロッコリの中心に向って右回りの渦巻きを見てみよう。全部でいくつあるかな?このブロッコリちゃんについてはそれが13個(巻き)ある。しかし、よ〜く見てみるとこれとは逆の左巻きの渦巻きも確認できる。これは21巻きあるのが確認できる。
数学に詳しいひとはここで気づくかもしれない(本当に詳しい人はすでに先が読めてしまうかな)。そうこれは、フィボナッチ数列に出てくる数字である。フィボナッチ数列ー高校の数学で何となく出てくる不思議な名前の数列。1、1とはじまり2、3、5、8、13、21・・・とつづく数列、つまり前の二項を足して次の項をなすすうれつである。そしてこのフィボナッチ数列の隣り合う二項の比、つまり1/2、2/3、3/5、5/8、8/13、13/21・・・はある無理数に収束する。それが黄金分割比である。具体的には0.61803・・・=(√5−1)/2と言う数字である。建築や絵画の世界で美的なプロポーションを持たせるというこの比率は古来よりよく知られている。そして今もなおである。iPodの長辺と短辺の比もこれにかなっているのだ。
このブロッコリ・ロマーニの場合と似たようなケースは多々あり、松ぼっくりのカサ、ひまわりの種の配列、パイナップルの皮の模様も同じような比率のもとに「渦」を巻いています。これはなぜか?それは成長過程で効率よく細胞を増やし幾何学的に最も理にかなった成長をする為だと言われています。そしてそれが人間の目にも美しく映るようです。ヴァイオリンの渦巻きや本体のプロポーションなんかもこれを元にデザインしているんですよ。
なので一見なんの関係もないヴァイオリンとブロッコリですが、こんなところでつながっています。しかしこのブロッコリ、もっと驚くべきは小さいイボイボも同様に渦を巻いているんです。そうその小さい花弁はさらに子孫を繁栄させようと幾何学のルールをめいいっぱい駆使してこの形をなしているだ!
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by shinop_milano | 2009-02-15 09:03 | 楽器製作

La petite Bandeを救え!

某SNSにて古楽アンサンブルの先駆、S.クイケン率いるLa Petite Bandeがどうもベルギー政府からの援助を打ち切られるという方向になっているらしいということで署名活動を訴えているのを知りました。世界経済の悪化はこんなところまで皺寄せしているのかなぁ。
ということで私も署名しました。署名数は数日で15,000を超しています。古楽ファンの方はどうぞよろしくお願いします。私は15515番目でした。署名者の履歴をたどると業界著名人の名前も多く見受けられるようです。

「Save la Petite Bande!」のサイトはこちら:
http://www.savelapetitebande.com/index.php?l=en
by shinop_milano | 2009-02-14 20:51 | 楽器製作

そろそろ作業に復帰

いつまでも休んでいられないので今週あたりから作業に復帰します!とはいえ最初からハードワークもできないのでまずはライトワークに今度作ろうと思っているヴィオラの新モデルのテンプレートなどを作りました。
今度のヴィオラは身近な多くのリクエストに対応し本体40.0cmの小さいヴォオラを作ることにしました。G.B. Guadaniniの1784年製のものがなかなか個性的で寸法もいい感じなのでこれをモデルに選びました。
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本から写真を高解像度でスキャンしてPC状上で寸法を調整し出力屋に持って行って印刷、などなどの作業は予めこなして置いたのでこれをトレースして1mm厚のプラ版でウチ型のテンプレートを作ります。わたしはいつもこうしています。
ついでに頭はこんな感じです。
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これもphotoshopを使って実寸(と思われる)まで拡大しこんな風に用意。
しかし、この楽器今ひとつ製作の精度が足りない。晩年の作というのもあるでしょうがおそらく息子か誰かに手伝わせていたんでしょう。その証拠に渦巻きは左右で大違い。親父が半分見本を作って誰かほかに反対半分を作らせたような・・・
by shinop_milano | 2009-02-09 20:00 | 楽器製作

ボローニャの音楽博物館

久しぶりの投稿は旅行記。
初めてボローニャに行ってきました。ボローニャと言えば音楽史では有名なマルティーニ神父とアカデミア・フィラルモニカ。世界最古の学園都市は音楽理論から楽器の発展までのいろいろあるんです。そんなのがかいつまんでざっくりと見られるのが市内にあるボローニャ音楽博物館(図書館も併設)。実はヴァイオリン関係の古いものはなく、館内に20世紀後半の製作家O.ビニャーミの工房再現と数年だけ会ったボローニャの製作学校の写真だけであまり期待するものはなかったのだが、ここではボローニャ派のリュートや完全に異名異音を試みたエンハーモニックチェンバロを見ることができた。
エンハーモニックチェンバロはこれ。
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♭ミと#レ、#ファと♭ソはおろかすべての(だと思う)異名異音を具現化した鍵盤です。同じ部屋にはミーントンを唱えたアーロンからラモー、ヴァロッティに至るまでの重要な音律理論書が展示してあります。メルセンヌやキルヒャーの本もオリジナルが展示してあります。さすが、ボローニャ。初期バロック音楽ファンにはたまらないことでしょう。
それからモーツァルトをイタリアに呼び寄せたマルティーニ神父の手紙などはたくさんあります。細か〜い文字で、曲がることなく書かれた紙面に余すとこなく書かれた手紙には感心します。そして、教科書や物の本で見た作曲家の肖像画はここにたくさんそろっています。ヨハン・クリスチャン・バッハ(大バッハの末っ子、ボローニャではモーツァルトと一緒だったんだね)、ヴィヴァルディ、ヘンデル、タルティ−ニ、A.スカルラッティなどのナポリ派の作曲家などなど。極めつけはこれ。
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映画『カストラート』の主人公ファリネッリ。彼のでかい肖像画もここで拝見できます。その他ここで学んだレスピーギについてやオペラ関係の資料もいろいろあります。
これだけあって入場無料!すばらしいボローニャ、もう一度こなければ!
by shinop_milano | 2008-11-08 20:00 | 楽器製作

オイルの違い

これがこの夏に日光漂白したオイル(左)とこれから漂白しようとするオイル(右)の違いです。日光漂白した方が酸素を多く取り込んで粘性が高いです。このあとは水と沈殿物を取り除いてオイルニスを作るときに取っておきます。めでたしめでたし。

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by shinop_milano | 2008-10-15 20:00 | 楽器製作

今年のMondomusica とTriennale<今さらかい?

え〜これを書いている時点で既に1月たってしまったけど今年のクレモナ・モンドムジカとトリエンナーレの展示会について。
モンドムジカについて、去年に比べるとブースの数や業界関係者の数は去年より減ったように思えた。あれからひとつきあった後だから何となくわかるがどうも世界的に景気の良くない状況はヴァイオリン業界にも影響しているらしい。特に、「アメリカのディーラさんとか見なかったよね」みたいな話はどうも象徴的である。
d0079867_8502022.jpg次にEnte toriennale(トリエンナーレ実行委員会、というのかな?)企画の展示会。ミラノの学校の校長がEnte Triennaleの実行委員の一人でもあるので「みんなで一緒に見に行きなさい」ということで授業の一環として会場に足を運んだ。今回は1730〜1750年にフォーカスをしぼってのクレモナでの楽器製作をたどってみるという企画。これには最晩年のストラディヴァリとその二人の息子、グゥワルネリ・デル・ジェズ、ベルゴンツィ親子などが含まれる。今回良かったのはデル・ジェズの楽器などは経年的に作風の変化が見られたこと唯一現存すると言われている彼のチェロがやってきた、などである。ストラディヴァリの楽器では製作年同じでおそらく同じ木を使ってまるで双子のように見えるヴァイオリンや彼のピッコロ(小)・ヴァイオリンもやってきたことである。

今年は同じ博物館内にもう一つ展示会が企画されていてクレモナの製作学校70周年を記念してそこの過去現在に及ぶ教師すべての作品を展示していたのだ。ガリンベルティ、オルナーティ、スガラボットなど草創期に教師をやっていたマエストロたちや(実は彼らはミラノで仕事していたことを強調しておきたい)、今現役で活躍する製作家の作品も展示されていてこれはこれで非常に興味深かった。ここに並べられていた作品もさることながら、個人的に一番すごかったのは60年代にクレモナのアマチュア映画製作グループが撮影したドキュメンタリー映像で製作学校のラボで教師のピエトロ・ズガラボットと一緒に若きモラッシーたち学生が楽器製作の手順を追って完成までの行程を写していたプロジェクタだった。何がすごいって、クレモナの町がいまと大して変わっていないのもさることながら彼らの作業っぷりが、ええっ、これでいいの?とさえ思わせる大胆さと、これってあり得るの?という製作に対する感覚である。映像は3分クッキングさながらであったが、一見の価値はあり特にズガラボットの作業などは感心半分、お笑い半分で思わず2回上映を見てしまった(僕のうしろで教師のNegriもみながら時々大笑いしていたよ)。これ安くDVDが出たら買うよ。
by shinop_milano | 2008-10-08 20:40 | 楽器製作

ヴァイオリンの修復

今年度(9月から)の活動について何も紹介していなかったので今何をしているかを説明することにします。
6月に製作のコースを目出たく(?)終了しミラノ近辺でいろいろヴァイオリン業界の人たちとコミュニケーションもできるようになってきましたのでもう少しミラノでいろいろ経験を積もうかなとここに居座っています。それで、「製作」で終了したミラノ市弦楽器製作学校の「修復」コースに籍を置きつつ昨年世話になったマルティーノ・イウス工房で仕事を手伝わせてもらっています。
すでに修復コースの方は始まっているのですが、そこでは教材としてこの夏にマルティーノのところで行ったチェロの修復のお手伝いのお礼にもらった古ヴァイオリンの修復を始めています。
以下の写真のように以前の修理の状態が悪い(表板の割れが上手に閉じていない)ヴァイオリンから表板を剥がして一度接着&補強した部分をもう一度開いて奇麗に修理しようかという状態です。
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おまけにフタを開けたらバスバーも雑なものがついていたのでこれも将来的には交換することになるでしょう。さほど市場では価値のない楽器ですがちゃんと修理すればいくらかは弾けるものになるであろうと思います。細かく書くとキリはないのですが比較的少ない工数数で復活しそうなので成果を期待しています。
by shinop_milano | 2008-10-01 00:23 | 楽器製作

muller購入

ピグメント(顔料)を細かくすり潰すためにいよいよ思い立ってmuller(すり棒)を購入しました。結構高いんです、これ。予め日本での画材屋さん価格で調べてたのですが10,000円前後するようです。そんなに使用頻度は高くないけど必要なのでこれを機に買うことにしました。
ミラノでの画材屋はブレラの美術アカデミーの脇にあるCrespiが僕の御用達です。「mullerある?」
「あるよ。」(ショウウィンドウに手を伸ばす店員)
ものはLucasの径10センチくらいやつ(下写真)。
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「いくら?」
「54ユーロだよ」
(一瞬たじろぐ自分、約10秒いろいろ計算を巡らす)
「もしかして、学割って利かないですか?」
(店員、ボスと話す。ボスは僕らの会話を聞いている)
「50だ」
(再び計算する自分、日本円で7,500円)
「よし、買った!(交渉成立)」
という訳で我が家に画家アイテムが一つ増えました。
by shinop_milano | 2008-09-21 22:36 | 楽器製作

「ミラノ的ヴァイオリン製作の部屋」改め。埼玉に活動の場を移したヴァイオリン屋の徒然日記


by shinop
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