ヴァイオリン工房は不思議の部屋 ★camera delle meraviglie★

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クレマンシック・コンソートでノートルダム・ミサを聴く

日曜日の昼間、またコンサートに足を運んでしまった。なぜ最近頻繁にコンサートに行くの(ゆける)か?それはいまミラノとトリノで「MITO」と名を打った国際音楽祭を行っている。別に国際性はあまり感じないがこの辺は「北イタリア人の見栄」といったところである。MilanoとTorinoの頭文字をとっただけだが「伝説」を意味するイタリア語の「mito」とも掛けてあるのだろう、茨城県水戸市と国際的関係は全然ない。MITOについてその内容に興味のある方はこちらをご参考に。

それでそこではいくつかのコンサートは無料で入場できて聴けるのだ。ということで、コンサートに足が向いた。しかし、今回はコンサートとは言いがたい。なぜならミラノで最古のミラノの守護聖人の名を冠した聖アンブロージオ教会でギィヨーム・ド・マショーの『ノートルダム・ミサ』を聴いたからだ。だから気分的にはミサに参加した気分だ。
じつは、この曲の正体を家にかえるまでよく知らなかった。家にかえってから曲の内容を調べてなるほどと納得した次第だ。詳しく知りたい方はマショーの名前ででも作品の名前でもってでもgoogleで検索していただいて、一言で言えばミサの通常文に通しで曲をつけた一番古いミサ曲と認識されている、ということになる(これだけじゃ普通の日本人にはチンプンカンプンだろうなぁ〜)。作曲されたのは1300年代中頃、日本の歴史では鎌倉幕府が倒れて建武の親政をへて南北朝に至る頃である(この認識は重要)。

ここで一般の日本人に解るように説明するとまだこのころヴァイオリンなる楽器は存在しない。まだルネッサンスの一歩前なのでヴィオラ・ダ・ガンバもリラ・ダ・ブラッチョもない。存在した弓奏弦楽器はフィドルやレベックの類い。ということでメインはポリフォニーなカント(合唱というと語弊があると思うので、多旋律的重唱。というべきか?)である。時代区分的にはアルス・ノヴァということになる(これも恥ずかしながら今回聞いて時代区分が出来るようになった)。
なので感想はうまくかけない、なぜならあまりこの手の音楽をナマで聴いたこと無いからだ(CDではそのちょっと後の時代のアルス・スブティリオールな作品はよく好んで聞いているが)。で、今回は初めてナマで聞いた感想。演奏の始まりは諸処の楽器の合奏で始まったのだが、一発目の〈クレド〉の出だしでいきなり異次元に連れて行かれる錯覚を憶える。不思議な和声。ゆったりとした時間の中で半音より狭い単位の音程(語弊があるのは知っているが一般の人がわかりやすくこのように書く)が時たま交錯する緊張と弛緩の心地よさ。しかも適度に、いや、結構理想的な音響のあるアンブロージオ教会というのが幸運だった。これは聞いた人でないと解らない神秘さ。物の本の言葉を借りて日本人に解りやすくいうとまさしく「伴天連の声明」だ。

ということで「パリの声明」をミラノにて拝聴した。しかしすごいのはクレマンシック・コンソートのテンポ感覚というか息の合わせ方。通常の現代を生きる我々には、やれ、といってすぐ出来る時間軸感覚はないなぁ、と思いました。音楽の内容は簡素にして複雑、軽くて濃厚。いい体験でした。ああ、これでまた一つ未知の世界を憶えて世界が狭くなったと思う今日この頃です。
by shinop_milano | 2008-09-07 05:49 | ミラノ生活

「ミラノ的ヴァイオリン製作の部屋」改め。埼玉に活動の場を移したヴァイオリン屋の徒然日記


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