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フェルメールの絵を見にモデナに行く

今週末までモデナの博物館でフェルメール展をやっていて、たまたまパルマ在住の同じくヴァイオリン製作をしているちのけん君に話しを振られてモデナに来ている日本人の女性と3人でいっしょに行くことにした。今回はロンドンのナショナルギャラリーから『ヴァージナルの前に座る女』のみが来ていたのだが、惜しむらくは同館が所有するもう一点の『ヴァージナルの前にたつ女』は来ていなかった(う〜ん、これで特別展8ユーロは少々高いなぁ)。
絵画ファンの中でフェルメール好きな人はもちろん多いのだろうけど、楽器製作に携わる人間としては彼は楽器の絵を良く好んで書いていると言う点で興味深い。今回の『ヴァージナルの前に座る女』の中にはヴァージナルといっしょにヴィオラ・ダ・ガンバも描かれている(実はその後ろにはリュートを描いた絵が置いてある)。蛇足ながら、ヴァージナルは鍵盤楽器でチェンバロと同じ弦を爪で「弾いて」発音する楽器である。この楽器は言わば「家庭用チェンバロ」で、スピネットとも呼ばれるが(実際この展覧会のタイトルは『"スピネットに向かう少女"とデルフトの画家展」である)、最近では呼び方に分類される傾向があり本体が長方形型で弦が鍵盤に対して垂直に張られている物をヴァージナルと呼び、多角形型で弦が鍵盤に対して斜めに張られているものをスピネット、と呼ぶのが一般的のようである。この展示会ではイタリア人にわかりやすいように”スピネット”と題を付けたのだろうが中での説明ではヴァージナル(イタリア語ではヴィルジナーレvirginale)となっていた。
他の絵画は同時代のデルフトあるいはその近くで活躍していた画家の絵が来ていたのだが親子でリコーダを吹く家族肖像、フェルメールの絵の壁に描かれているオリジナルの『リュートを弾く取り持ち女』の絵、その他同時代の風俗画、静物画などが展示されておりなかなか興味深かった。楽器のサンプルとしてミラノからはスフォルツェスコ城の楽器博物館からルッカースの2段ヴァアージナルとヴィオラ・ダ・ガンバが出張で来ていた。
d0079867_8561287.jpg一応この絵の個人的解釈を述べておこう。テーマは引用は明らかにフェルメールの別の絵『音楽のレッスン』と同じで少女(おそらくこれから結婚して行くのではないかと思われる)をヴァージナル(純潔)と共に通奏低音を奏するヴィオラ・ダ・ガンバを男性に暗喩しておいているのではないだろうかと思われる(構図もガンバの上にヴァージナルが位置すると言う点でも二つの絵は同じである)。そして背景には不鮮明だがリュートをもつ取り持ち女の絵があるのだが些かデフォルメしてあり、ここでは決してそれとは見えず一人の男が一組のカップルを諭しているように見て取れる。多数の弦を持つリュートは弦と同じラテン語語源fidesをもつ"信頼”の象徴でもあり夫婦間の信頼、調和をモットーにしていると考えられる。この絵は他のフェルメールの作品と比べて精密さを欠いているように見えるが婚礼の記念にこんな絵をプレゼントされたらやはり最高ではないだろうか?
しかし、フェルメール憎いね。察するに超インテリだったろうし音楽に対する造形も深かったと思われる。まじめな人だったんだろうね、もう少しうまく稼いで楽な暮らしをしていたらもっとたくさん絵も残せたかもしれないのに。
by shinop_milano | 2007-07-12 07:22 | 楽器製作

「ミラノ的ヴァイオリン製作の部屋」改め。埼玉に活動の場を移したヴァイオリン屋の徒然日記


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