ヴァイオリン工房は不思議の部屋 ★camera delle meraviglie★

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フルートの肖像

どうもライフログの欄について説明が加えられないのでここでこの本を紹介したいと思う。そもそも「笛」は専門外だが歴史的楽器の検討となると実は管楽器のことも考えなくては行けない(と勝手に思っている)。
著者は古楽ファンにはおなじみのフラウト・トラヴェルソ吹きの前田りり子さんでフルート専門誌に連載していた記事を編集して本にしたとのことである。横笛についての発祥や歴史的にどう変化してきたかが書かれているのだが、現代のフルートのベースであるベーム式以降については(つまり1800年代)ほんの少しで、ルネッサンス、バロック、古典期(遷移期と言うべきか)でどのようにフルートが変化してきたのかとその時代的な背景がとてもわかり易く書かれている。演奏家の人にとっては良く聞くセリフになってしまうが、作曲家はその当時の楽器の音と機能を考えて曲を書いているのでバッハが、モーツァルトが、ベートーヴェンがどの様な横笛像をもっていたか知るのは重要だ思う。この本で勉強したことの一つはフルート教本で有名なクヴァンツと言うひとは色々な資料を残していて当時の音楽を知るには重要な人物であること、もう一つは古の時代の基準ピッチについてである。後者の方が弦楽器製作に取っては非常に重要である。
一般的に古楽と言うと基準ピッチA=415Hz(A=440の約半音下)とかA=392Hz(A=440の約1音下)であわせたりするが、昔は地域、場所、団体等によって基準ピッチはバラバラだったのである。どれくらいバラバラだったかと言うと同じ街でも教会のオケと劇場のオケ、領主さまお抱えの楽団でも基準ピッチは一致しない(詳しく知りたい人は音響物理学で有名なH. ヘルムホルツの本を参照すべし)。昔は個人所有の楽器を団体で使用するのより領主さま、劇場、教会などの団体が所有している楽器を使うことが一般的だったようでその限りでは基準ピッチは気にしなくていいのである。ということは、楽器はその楽団にあわせてオーダーメイドだったりする訳である。弦楽器は弦の張力を変えればある程度のピッチの変化には対応出来るが、管楽器はそれが難しい。少ないキーではシャープやフラットに多い調の曲を演奏するのも難しい。このような問題の解決を考えながら変化(発展とは一概に言えない)してきた横笛の歴史を読んでこの分野にも楽器製作とは工夫と知識と技術の粋が織り込まれているのを感じて共感を覚える次第である。
基準ピッチはバラバラだった、この事実を踏まえ我々ヴァイオリン作りが考えるのは「ストラディヴァリの基準ピッチはなんだった?」ということである。これは楽器(と弦)を考える上でとても重要な問題である(長くなるので、この件はまた別に)。ともかく、古楽が好きな人もそうでない人も、フルート吹きもそれ以外の楽器弾きにもお勧めです(案外、フルート吹きが一番読んでいなかったりして・・・)。
by shinop_milano | 2007-01-14 08:40 | 楽器製作

「ミラノ的ヴァイオリン製作の部屋」改め。埼玉に活動の場を移したヴァイオリン屋の徒然日記


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