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エポキシ樹脂:問題といくつかの解決策

数年前にミラノの楽器製作学校の修復科で検討していたテーマ、

楽器の修理・修復で使われた化学系接着を剥がすにはどうしたらよいか?

について、エポキシ樹脂の剥離にはどうしたらよいかということを教官たちと実験していました。戦後化学系接着剤の普及に伴って醋酸ビニル系接着剤(いわゆる、木工用ボンド)などをもちいて美術工芸品の修復が行われたがそれらが時間の経過とともに適切な方法で無かったとわかったとき、それをどうリカバーするか、というのが修復業界のテーマになっていました。


エポキシ樹脂:問題といくつかの解決策_d0079867_123068.jpg醋酸ビニル系接着剤やエポキシ樹脂による接着剤は接着面に「厚み」を残してしまい時間が経つと硬化しバイオリンのワレや剥がれの接着に用いた場合、再び開いてしまったり硬くなり過ぎて音響的に悪影響を及ぼしたりします。
なので、バイオリンの製作、修理に使う接着剤としては水に溶解し木にも相性よくしみ込むニカワによる接着が一般的です。
写真のようにヘタな接着の仕方で塊になって残っていると目を覆いたくなります


エポキシ樹脂:問題といくつかの解決策_d0079867_12495915.jpgそのときのエポキシ樹脂について都合の良い剥離剤がないといいうことで修復化学を教えていたクラウディオ・カネヴァーリClaudio Canevariといっしょにエポキシ樹脂の剥がし方を検討していました。クラウディオ・カネヴァーリのレポート(イタリア語)はこちらに紹介します。画像のリンクが切れているのですが、左の写真のように検討していました。そしたら先日、なんとこのときそこそこいい結果の出た薬品が日本で普通に製品として売られているのを見つけました!


エポキシ樹脂:問題といくつかの解決策_d0079867_12434625.jpgこれです。画材メーカーらクラカベ販売されている油彩画用のリムーバー。主成分はN-メチル-2ピロリドン。筆やパレットに固まってしまった油絵具を剥離させるためのものです。この薬品そのままでは液体なのですがカネヴァーリとはこれにゲル化剤を混ぜて局所的に塗布できるようにしていたのですが、このリムーバーは緩いゲル状です。


エポキシ樹脂:問題といくつかの解決策_d0079867_12593827.jpgすぐに買ってみて実験してみました。板の上にエポキシ接着剤を垂らして硬化させたあとにこのリムーバーを垂らして30分程放置してみました。すると爪楊枝をつかって簡単に掻き取れる程に軟化し写真の通りです。


エポキシ樹脂:問題といくつかの解決策_d0079867_1382875.jpgバイオリンの場合はデリケートなニスで塗装してあるので使用には要注意が必要です。また、市販されている画材とはいえ使い方、使う環境にも注意が必要です。ニスを多少なりとも溶かすのでその点を十分心得ておかなくては行けないのですが、ワレの隙間に残った接着剤などはそのままではスクレーパーや針で掻き取れないので有効な手段だと思います。
by shinop_milano | 2013-01-26 13:09 | 篠崎バイオリン工房

「ミラノ的ヴァイオリン製作の部屋」改め。埼玉に活動の場を移したヴァイオリン屋の徒然日記


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