"ヴァイオリン・ポルノ"
G.B.グァダニーニはピアチェンツァ出身のヴァイオリン製作家。昨年が生誕200年(グァルネリ・デル・ジェズより1世代下になるかな)で彼が一時期活動していたパルマで記念の展示会が企画された。日本では真贋問題の裁判で有名になってしまったかれだが、製作家としてはたいへん興味がある製作家である。
今回は予約販売で昨年12月に予約したものがようやく届いたのだ。
ページを繰ってみると思っていたよりクオリティのある写真だ。興味ある解析のデータなども載っていて予想以上のモノであった。限定出版なので各コピーにナンバリングがしてある。僕の本は84番である。
だいたい、ヴァイオリン関係者はこういう写真をみて、うんうん、とうなずきながら見たり、じっくりと舐め回すように1台の楽器の写真を見入ったりと普通の人が見たら完全に変人のように見えるだろう。なにせ普通の人にはどれも同じように見えるのだから。
最近読んだ『ニューヨークの弦楽器職人』の主人公、サミュエル・ジークムントヴィッチはこうしたヴァイオリンの写真集のことを”ヴァイオリン・ポルノ”と呼んでいた。あくまで写真集であり実物ではなく、その見え方は本物とは違った何かがある(もしかしたら本物より美しく見える!)。うまく言ったものだ。
そう考えると、将棋棋士が棋譜をみてゲームの内容を想像できるのとかも同様にこういったもので興奮する我々はかなりヤバい人種なのかも、ということを改めて認識した次第である。