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ヘレヴェッへ/シャンゼリーゼ管をモデナで聞く

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先週モデナのテアトロ・コムナーレでフィリップ・ヘレヴェッへ指揮のシャンゼリーゼ管弦楽団を聞いた。シャンゼリーゼ管弦楽団はピリオド楽器のオーケストラである。つまり、弦楽器はガット弦、チェロはエンドピン無し、クラリネットは黒くない、といった楽器を使っているのである。もちろんヘレヴェッへ氏は「古楽」畑のひとなので音楽の語法もひと味違う。レコードはなんども聞いているが生の演奏は初めて聴くことになるのでとても楽しみにしていた。
今回のプログラムはメンデルスゾーンの交響曲3番「スコットランド」とシューマンの交響曲3番「ライン」。どちらも1840年代に書かれた曲でロマンティシズムあふれるこの辺の曲は最近とても興味深い。ちなみにこの二曲、このように日本語では名詞のタイトルがついているがイタリア語ではそれぞれ「scozzeseスコッツェーゼ」と「renanaレナーナ」の形容詞(もちろんドイツ語でも形容詞)である。
さて感想。オケの演奏は以外に「モダン」っぽい。特に管楽器。楽器を見る限りは、クラリネットが黒檀でなく、1番フルートが象牙製(と思われる)の頭部管のついた楽器を使っていた他はほぼモダンの楽器に近いようなかんじで(ここが違うんだよ〜、というのがっあたらごめんなさい)音も「普通」の音色に聞こえた。でも象牙付きフルートはいい音していたなぁ。弦楽器は「ガット弦の語法」もある為か、あるいはそれが故に独特の響きをだしていたといえるがヴァイオリンとヴィオラはほとんどの人が肩当てを使っていた。
「スコットランド」は、こんなにいい曲だったのか、と10年ぶりくらいに聞いて思ってしまった。メンデルスゾーンは楽器の使い方がうまいと再認識。逆にシューマンの交響曲はオーケストレーションがうまくないと言われるがヘレヴェッへの曲の作り方がうまいのか、ガット弦を張った楽器での演奏ではそれはむしろうまく出てきていた。ガット弦は強弱や音色の巾が広く表現の巾が広いが金属弦やナイロン弦を張った楽器ではとにかく「鳴る」ので一本調子に鳴りやすい。だからバランスを作るのが難しいのだとおもう。特にチェロのA線なんかは金属弦とは全然違いハスキーだし、逆にC線は野太いのだ。この差は大きい。今回の白眉は4楽章のフーガ。この楽章は「精神病の音楽」だと思っていたがその考えを改めさせられた。バランスの作り、音程の取り方は丁寧に練習した形跡が見て取られた。ヘレヴェッへの指揮ははっきり言ってうまくないが、音の組み立てはこだわりの深さを感じる。実際にライブで聞いてみるといろいろ再発見があるものである。
by shinop_milano | 2010-04-30 08:00 | モデナ生活

「ミラノ的ヴァイオリン製作の部屋」改め。埼玉に活動の場を移したヴァイオリン屋の徒然日記


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